キタキツネ  いたずらギツネとエキノコックスについての注意

キタキツネについての話を一つ。
北海道の田舎では キタキツネの生活圏と 人間の生活圏とはクロスしています。
いわば 都会以外の人里では 野良犬のごとく 人間の生活圏に入り込んでいます。
彼等は 観光客からえさをもらったりして 餌付け状態となり 人間を恐れなくなり 又人間の食べ物の味を覚え その結果 ごみ置き場をあさることになりました。
彼等は 北海道ではカラスと共に 害獣扱いとなっています。
北海道を ツーリングするライダーにとっては 可愛い動物に見えますが ときとして注意を要することもあるのです。

数年前の夏のツーリング 屈斜路湖のとあるキャンプ場でのこと 夕方メシの支度をして売店まで行くのに 席を外した所 置いておいたおかずがなくなっていました。
いくら探しても見つからないので 仕方なく 又売店まで行くはめになりましたが その話を売店の店主に話すと きつねに取られたのだから あきらめなさい という返事でした。

テントに戻って 食事も済ませ同行者とくつろいでいると 管理人さんがやってきて テント外に置いているブーツを中に入れるように 指示を受けました。理由を聞いてみると 夜中にきつねがいたずらをして ブーツを森の奥深く持っていってしまう ということを教えられました。私は 人も多く明るいこのキャンプ場で そんなことがあるというのが 信じられず反論すると 管理人さんは「嘘だと思うなら 周りの暗い所をライトで照らして見なさい」と指示されました。
そこで暗い所を 照らしてみると きつねらしき影は見えないけれど 幾つもの小さな光が ライトに照らされて うごめいているのが見えて驚きました。その時 管理人さんがいうのも 正しいと納得してしまいました

北海道各地のキャンプ場は ごみの管理をとても厳重に行っています。ごみ集積場は 大きな金網のケージで覆われ 蓋も上向きの開閉式になっています。これは きつねよけ そしてカラスよけらしい。
知床の方では ヒグマもごみを求めて 人里を徘徊すると聞いたことがあります。
こうなってくると 事件になってしまいます。

もう一つ キタキツネについて。
キタキツネについては 注意しなければならないことがあります。
キタキツネを媒介として 人間にもうつることのある「エキノコックス」という寄生虫にです。
エキノコックスは 本来キタキツネの寄生虫でありますが 人間にも何らかのキツネとの接触において 稀にうつることがあるらしく 死亡者も報告されていると 現地の医者に聞いたことがあります。
感染経路としては キタキツネとの餌やりなどの 直接接触 又汚染された山水を飲むことによりエキノコックスの卵を 体内に摂り入れてしまう経口感染などです。
エキノコックスは 病気に感染したキツネの糞から 卵の形で排泄され 次の宿主を探しています。本来は 他のキタキツネに接触して口から入り込んで 寄生が行われるのですが 人間の体内に入り込むと 肝臓に住み込んで 長い時間をかけて肝臓を食い続け やがては寄生された人間は肝臓を食い破られ 肝硬変→肝不全というコースで死にいたります。
これに寄生されると 基本的に根本的な治療法は難しいと聞きました。私の聞いた頃には特効薬はまだ無く(2003年現在は解らない)エキノコックスを取り除くには 開腹手術をして肝臓から直接寄生虫を 一匹ずつ取り出さないとダメらしいと脅かされたことがありました。
ここまで聞くと 真偽の程は怪しいと思いますが 本当だとすると、とても恐ろしい事です。

北海道民の キツネに対する警戒は 地方によっては 厳重な所もかつては見られたようです。 この疫病を防疫する為 第二次大戦後 礼文島では全島のキツネとイヌ(飼い犬も全て)の駆除(イヤな言葉だが)を行った事が かつてありました。
イヌにもキツネからうつる可能性が 大きいということなのです。しかし エキノコックスを持ったキツネを 根絶することは困難なことらしい。冬になると流氷にのって 北から生活圏を求めてキツネがやってくるという。病気持ちの狐も やってくるのでしょうか。
それはそれで 一度見てみたい気もしますが・・

 私も 一度エキノコックスで 怖い目にあっています。例の礼文島の 「愛とロマンの8時間コース」に学生時代参加した時のこと これは車の通れない礼文島の西海岸(遊歩道になっています)を 友人と歩いた時 水筒を持っていかなかった為 のどが渇いて山の清水を 少し飲みました。とても美味しい水で 帰ってから島の人に聞くと あの水はエキノコックスに汚染されているから 島民は飲まないよ と教えられました。
・・・でその時初めてエキノコックスという名前と その恐ろしさについて 教えられることとなりました。
土地のおじさんによると エキノコックスが体内に入り込んでも 潜伏期間が長く 発病しても この病気だと判明するのは分かりにくい という説明をされました。
エキノコックスが 体内で孵化してから 10年位して死にいたるそうで、「あなたが 結婚して子供が出来て その子供が小学校に上がる頃 死んでしまうよ」というふうに えらいリアルに 脅されました。

その後 何年もビクビクして過ごしましたが アレは学生時代でしたから もうとうに潜伏期間を過ぎて 無事おっさん世代に突入しております。
一時は 体調が悪くなると心配で すぐ専門医に診て貰えるように 北海道移住を真剣に検討した事があります。今から考えれば 笑い話ですが 当時は真剣でした。
(体調を崩した原因は ただの二日酔いでした)

旅先で 生水を飲むのは厳禁 というのは鉄則でしょう。ただし公共団体が 安全を保障している名水などは その限りではありません。(当然ですが)

愛らしいキタキツネですが 決して餌などやらない様に!人馴れして 道路でうろうろして車にはねられたキツネを 見たことがあります。
餌やりは キツネにとっても人間にとっても 百害あって一理なしです。


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