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霊場恐山


今までで いちばん印象的な 風景のお話しです。
その年の夏は フェリーで北海道を周り 自走で大阪まで帰りました。
函館から本州最北端の港 大間から上陸して 恐山に到着したのは 早朝でした。

人気の無い山門は 想像していたよりも立派で新しく もっとおどろおどろしいものを想像していた私にとっては 少し拍子抜けでした。

広い境内に入ってみると 普通のお寺とは違い 建物は少なく 本堂やその他の建物以外は 小高い丘に大きな荒地が広がっていました。

一通り参拝を済ませて 荒地の方へ行ってみると そこは墓場のような広い広い迷路のような 不思議な場所でした。
小高い丘になっているそこは まさに霊場と呼べるものでした。迷路を巡ると足元にはお墓のようなものに混じって 石仏が何体も安置してあり 小さなものは漬物石くらい 大きなものはひとの背丈くらいありました。

こぶし大の石を積み上げたケルンのようなものも 数え切れないくらいあります。
お地蔵様には 赤やピンクの前掛けがしてあり 風に揺れています。
それらが 荒地をうめるように びっしりと並んでいます。
そして印象的なものは 無数の赤い風車 千代紙で作られた風車が 地面に突き刺すように無数に立っています。
その高さは 人の目の高さくらいまであり 風になぶられて カラカラ カラカラと廻りつづけています。

足元が悪いなか 霊場を巡っていると ふと人の気配に気がついて 後を振り返ってみると 大きな大きな人影が見えました。
まだ暗い中 凝視すると 人の背丈より大きなお地蔵様が じっとこちらを見ておられました。
眠ったようなその目は 私を見ておられるようでもあり 何も見ておられないようでもあり  気味の悪い表情でした。

地熱が高いのか 地面から湯気が立ちのぼって ゆらゆらと揺れており 生き物は私以外は居ないはずのこの荒地で 漂う白い湯気 カラカラと回り続ける無数の風車 風の音
揺れるお地蔵様の前掛けと とても印象的な風景を見た瞬間でした。

この場所は 賽の河原と呼ばれるところで 幼くして死んだ子供や 水子の集まる所だそうです。
お地蔵様や風車は 亡くなった子供の為に 参拝者が奉納したものだそうです。

荒地の突き当りには「宇曽利湖」という小さな池があって 澄んだ水の向こうの山を映し出していました。
この湖は 酸性が強くて 死の湖だそうですが 唯一特殊な進化を遂げたトゲウオという魚だけは この過酷な環境の中 ここで生きているそうです。

薄明のなか 宇曽利湖にぽっかり映ったレンズ雲と 振り返ってみた無数の風車が この世のものとは思えない空間を作り出して いつまでも忘れられない旅でした。

また いつか行きたい場所のひとつです。

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