北海道第五夜 懐かしい町へ 
再びタイヤトラブル

一夜明けて カブのご機嫌伺いに行く。今日こそは すんなり出発したいものだと期待した。昨日修理したリアタイヤは・・・・  ?パンク?なんで???

昨日修理したタイヤが また昨日の朝と同じように パンクしていた。 まただ!しばらく考えた

 今日は今年のツーリングのハイライトを走る予定だ。そこはダート。寒い朝なのに 冷や汗が吹き出してきた。昨日の修理は いったいなんだったのだろうか?アレだけの労力を使って また元通りとは いかにも ひどい結果だった。

どうしよう? 私はライダーハウスの前で しばらく考え続けた。えいっ なんとかなるさ。空気を入れたら 急激に抜けることもないだろう。昨日も おとといもそうだったのだから・・・
実に いい加減な理屈をこねあげて 自分を納得させて タイヤだけではなく 期待まで膨らませて ライダーハウスを後にした。

「昆布刈石」 
 10年前は 奇妙な違和感のある不思議な道を ダートバイクでとぼとぼと走った。片方は崖の下に海 反対側は 牧場とそれを仕切るような 木の電柱と電線。
ただの「未舗装路」というには あまりにも味のある 不思議なダートだった。

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あらためて平成十五年夏に ここに来てみると 随分短くなった不思議な道だが 面影はまだ残っていた。
霧が濃くて何も見えず 待望の荒れた海も はるか霧の下だったが、独特の景色を少し残して ナウマン国道に続いていた。ただし 入る方向を間違ったようで 釧路側から入ると 面白味が少ないようだ。やはり帯広側から入ればよかった。・・・と後悔するが、もう一度戻る勇気はさすがになかった。

なんせ パンクタイヤで 堂々と走っているのだ。
昨日の 姫路のGL1500のおっちゃんの気持ちが 少し解った気がした。
でも トラブルを楽しむ自分を見つけて 複雑な気持ちだった。昨日今日と いろいろあった。いろいろありすぎた。この文章の何倍も 書ききれないくらいの出来事だった。

でも楽しい。負け惜しみではなく、空気を時々見て 時にはタイヤを指で押してみて 感触を調べてみる。ヨシ 大丈夫。見たところ 全然空気は減っていない。
そこで 少しだけ 空気を抜いてみる ダートバイクでは良くやるやり方だ。ダートでは 少し低圧の方がグリップしやすく 走りやすい。空気入れは持っているので いつでも元に戻せる。(ポンピングは つかれるけれど) ただ過積載なので やりすぎは禁物。
少し走ってみるが 景色を味わう為に路肩に止める。

下から チャリダーさん(自転車旅行者)が上がって来た。少しお話しをする。
彼等の話題は いつも決まっている。この坂は どのくらい続いていますか?この先に町はありますか?水場はありますか?風は強いですか?
彼等のエンジンは 自分の生身の体である。足である。北海道の道を 自分のタイヤで一筆書きするのが 彼等の唯一の のぞみであり使命である。

「登りは もうすぐ終わりです。後はくだりが続くばかりです」 「ありがとう」彼は満足して バイクを押して上がっていった。そんなに辛いなら やめればいいのに・・・一瞬思ったが すぐに言葉を押し殺した。トラブルを抱えた私と どこが違うというのか。

「昆布刈石」 来年はこの道も 激変しているかもしれない。
タイヤをいたわりながら 帯広をめざす。

毎度様!
帯広には 5月の北海道ツーリングで お世話になった バイク屋さんがある。あそこまで辿り着けば 完璧にタイヤを診てもらえる。
←ご主人 御自身もカブ乗り カブクラブあり
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石王輪業38店 こちらで春もタイヤ交換と オイル交換をお願いした。チューブををみてもらうと 過積載の為 修理したパッチが剥がれたらしい。

思い切って 前後のタイヤ交換と チューブ オイル交換をお願いした。前のタイヤは 交換時期 後ろはまだ少し山が残っていたが 交換することにした。まだ道内千キロくらいは走る予定。ここで換えなければ後が無い 実際 ここも明日から盆休みだった。滑り込みセーフ。
この店も2回目ともなると 懐かしさでいっぱい。私のホームページも見ていただいているそう。とてもうれしい。
掲示板へ 書き込みもして欲しいなあ。

店内では ここの奥様が 電話応対をされています。
何とはなしに聞いていると 「毎度様・・・」こんな挨拶が聞こえた。ああこれ 札幌の 子持ち風味さんが いつもタイトルにされているなあ。北海道弁だったのか。
これからこの挨拶を聞くと 懐かしくなるだろうな。

修理が終わって 皆様に別れを告げ 駅前のぱんちょうへ向かう。ここは超有名な豚丼屋さん。しかし 店の前は長蛇の列でとても入れない。一時間待ちだったので 即あきらめた。
駅前の交番で 別の豚丼屋さんと ホームセンターの場所を聞く。とても親切なおまわりさんで 北海道の人の暖かさと 平和さを感じる。

帯広のホームセンターを 2〜3箇所走り回る。ドコも同じような品揃えだが 見てまわるのはとても楽しい。土地の人の生活ぶりが分かって 何となく旅気分が高まる。

目的の リアボックスのフタが 見つからない。小さな工具専門店を覗いて 似たようなBOXを見つけるが 蓋の寸法があわない。しょうがないので 割れた蓋はガムテープで補修して そのかわり小さいBOXを新規に購入する。ここへ大事なものをいれて 蓋の破損したBOXは 濡れてもいいものをいれる。ここに来て とうとうリアボックスは 3段になってしまった。後ろからは 私の頭すら見えないだろう。迫力満点になってしまった。
過積載が えらいというわけではないと思うが しょうがない。
ホントの賢いツーリングライダーは 荷物をできるだけ少なくして走ることが ベテランの証だという。私のような ヤドカリライダーは 愚の骨頂らしい。まだまだ 修行が足りない。これからの課題として 考えていこうと思う。

トラブルライダー

途中のホームセンターの駐車場で BMライダーさんが バイクを応急修理されているのを見た。聞くと充電不良らしい。この旅で都合3台のBMWと 1台のGL1500のトラブルを見た。みな 電気系トラブルらしい。大型バイクは ガソリンではなく電気で動くのだろうか。バッテリーあがりはインジェクションの泣き所らしい。時代遅れのキャブも まだまだ存在意義はあるようだ。

だんだんと 夕暮れが迫ってきた。
帯広に来てから 半日潰してしまったが 有意義な時間だった。懐かしい人にも会えたし、街中をぶらぶらしたのもよかった。しかし豚丼は食いはぐれた。

次第に 疲れが出てきた。今は とにかく早く休みたい。大樹町の道の駅で どこか軒下を借りて 野宿することに決めた。この時午後6時頃。

コスモール大樹
やっと見つけた道の駅はスーパーマーケット併設の ほんとの意味の道の駅だった。ここから帯広まで バス便が出ている。当然 バスの待合所もある。
とてもキレイな 畳敷き部屋併設の待合所があって ここで仮眠させてもらうことにした。

地元の人に仮眠しても良いか聞いてみると「きれいに使えば 良いんじゃないの?一晩くらい」という返事だった。

豪華晩餐
スーパーで買出しをして 豪華晩餐をやらかした。厚岸産 生牡蠣 イクラのしょうゆ漬け
焼き鳥 おにぎり クリームチーズ シードル(微発泡性のりんごのワイン)黒ビールを
ひとりでたいらげた。残念ながら 火気厳禁なので コンロは使えない。

しばらくすると ひとりの高校生の女の子が 待合所にやってきて 向こうから話しかけてきた。
「旅行者ですか?」「はい、バイクツーリングです」「えっ カッコいい!」「・・・・」
本州では ツーリングしてても カッコいいと言われるのは 皆無なので少し面くらった。

カブを見せて 少し話しこんだが 目をきらきらさせて聞いてくれた。
私の地元ではバイク乗りは 評判が良くない。むしろ どちらかというと 「嫌われ者」 の要素が強い。
そういえば道東では 昼間走っていると 沿道の子供とお母さんが 手を振ってくれることが多い。こんな時は ピースサインでお返しする。
こちらでは バイク乗りはかっこいいんだろうか。少し気分がよかった。

彼女は まもなく おじいちゃんが車で迎えに来て 帰って行った。帰り際 車内からずっと手を振ってくれたのが印象的だった。

就寝前に 携帯を充電しながら 隊長さんのサイトの掲示板に目を通す。もう 北へ向かって相当走っておられるようだが 相変わらず私の携帯では 長い書き込みは 下のほうがカットされて読めない。沢山の人とやり取りされているので 返信が長文になっているようだ。
いま何処を走っておられるのだろう?
訪問者が多く とても書き込む隙間がないので このまま 無言で済ますことにする。

今晩も 私は行方不明者だった。

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